ハイブリッド車はモーターとエンジンを併用して走る。エンジンを常に効率の良い状態で動かせるために燃費が良い。それより燃費が良いのが電気自動車だ。家庭内などの電源で電池を充電して、モーターのみで走行する。ただ、電池の容量に限界があることから、1回の充電当たりの走行距離が限られるのが悩ましいところだ。
プラグインハイブリッド車は、電気自動車と同じように充電して、一定距離をモーターのみで走るために燃費が良い。さらに、電気自動車より長い距離をドライブできる。電池が切れれば、エンジンのみで走行できるからだ。つまり、プラグインハイブリッド車はハイブリッド車より環境性能が高く、電気自動車より利便性が高い。
各社が「世界初」を競う
開発をリードしているのはトヨタ自動車だ。2007年には世界で初めて試作車を公開し、日米欧で公道試験を始めた。
まず充電時間は200ボルトで1〜1.5時間。電池だけで走行できる距離は、ハイブリッド車「プリウス」が2〜3キロメートルなのに対して、プラグインは13キロメートルまで距離を延ばした。プリウスより20%燃費が良い。
ただ、今回はニッケル水素電池を使っており、それよりエネルギーを蓄えられるリチウムイオン電池などを使えば、電池だけの走行距離が延びて燃費は高まる。トヨタは2008年に電池研究部を立ち上げ、電池の開発を強化した。今後は、電池の性能が自動車の性能を左右すると言っても過言ではない。
それを体現しているのが中国のBYDだ。同社は1995年に電池メーカーとしてスタート。携帯電話やパソコン向けにリチウムイオン電池を納めていた。その余勢を駆って2003年に自動車事業に参入。2008年12月にはプラグインハイブリッド車を発表し、2009年に世界で初めて発売する。実力は未知数だが、BYDの攻勢は電池の役割の大きさを示している。
もちろん、ビッグ3も黙っていない。ゼネラル・モーターズは2010年にプラグインハイブリッド車を発売する予定だ。エネルギー容量を増やした画期的な電池が開発されれば、自動車の業界地図を一気に塗り替えるかもしれない。
電気自動車と競合
プラグインハイブリッド車には課題もある。電気自動車に比べると環境性能が劣る点だ。エンジンを積んでいるため電気自動車より車重が重く、燃費が落ちる。もちろんエンジンを稼働させる際に排ガスが発生する。ハイブリッド車と比べると、大きな充電システムが必要になるため、コストがかかってしまう。
普及のポイントは、電気自動車がどこまで進化するかだ。1回の充電による走行距離が500キロメートルまで延びれば、エンジンを積む必要性は薄れる。また、コンビニエンスストアに充電スタンドが常備するなど充電インフラが整えば、電気自動車の利便性は高まる。
日本は自動車と電池、エレクトロニクスの技術力で世界をリードしている。様々なタイプの自動車が切磋琢磨しながら商品力を高めれば、プラグインハイブリッド車でも世界一の座を確保できそうだ。