2009年5月4日月曜日

マツダのエコカー技術



マツダ独自の技術、水素ロータリーハイブリッド

 マツダのエコカー技術を象徴するのはプレマシーをベースとして開発された水素ロータリーハイブリッド車だ。これは一部の関係先にリース販売(という言い方もおかしいが)されているだけの試作実験車レベルのクルマながら、ほかのどのメーカーも作っていない先進的なクルマである。

 ハイブリッド車としてはシリーズ方式と呼ばれる方式を採用する。水素を燃料とするロータリーエンジン(RE)は発電のために使い、発電した電気を使ってモーターで走る仕組みだ。しかも水素がなくなった場合にはガソリンでREを回して走ることも可能なデュアルフューエルシステムを採用している。ハイブリッド車にすることで水素REに比べて2倍に近い200km程度の走行が可能になったが、まだまだ航続距離が短いためにガソリンとの併用も可能なシステムに仕上げたわけだ。

 そもそもマツダは水素REハイブリッドのベースとして、水素REの研究開発を進めてきた。マツダは世界で唯一ロータリーエンジンを実用化している自動車メーカーだが、この水素を燃料として使う研究を従来から進めていて、RX-8をベースにした水素RE車の公道走行を実現するなどしてきた。

 ほかの自動車メーカーのほとんどが水素を酸素と反応させて電気を取り出す燃料電池車の研究を進めているのに対し、マツダとBMWはエンジン内に水素を噴射して直接燃やす方式を研究している。燃料電池車には稀少金属を使う触媒をどうするのかなど、解決すべき課題が山ほどあるのに対し、水素を直接燃やす方式なら既存の内燃機関(エンジン)の特性を生かせるというメリットがある。マツダとBMWが水素を燃焼させる方式にこだわってきたのはそのためだ。

 さらにいえば、ピストンが往復運動をするBMWのオットーサイクルエンジンに比べ、ローターが回転するマツダのREは、エンジンの構造的に水素燃焼との相性がよい。だからこそマツダは水素REに力を入れてきた。

 ただ、水素はガソリンに比べると燃料としてのエネルギー密度が低い。クルマに積んだ水素で走れる距離がガソリン車に比べて短くなってしまうのが難点だった。それをカバーするために開発したのが水素REハイブリッドである。

 将来的には、石油が枯渇した後のエネルギー源として水素を使うことになるという大方の合意は成立しているが、水素からどのようにエネルギーを取り出すかについては、どの方式が良いかはまだまだ各社とも確定していない。マツダの研究がどのように実を結んでいくかは今後おおいに注目される。

新技術i-stopで量産ガソリン車全体の燃費向上を図る
 とはいえ、マツダにとっては多くの苦難が待ち構えていることが予想される。水素を燃やす方式を研究している自動車メーカーはほかにBMWしかない上、マツダのREはBMWのエンジンと方式が違うので研究開発での協力も行われていない。ほかの多くのメーカーが同じ方式の研究開発をしているなら、多数の技術者の英知を集めることで研究開発が進みやすいが、マツダは独自に水素REを研究しているだけに、すべての問題を単独で解決しなければならない。というか、どんな問題が発生するかさえ自社だけで考えなければならないのだ。

 水素REハイブリッドではなく、もう少し現実的な市販できるハイブリッド車や、あるいは電気自動車などの次世代自動車になると、マツダは一般ユーザーに販売できる形のものは何もラインナップしていない。燃料電池自動車についてはデミオとプレマシーで試作車を作ったことがあるが、2009年4月の段階では一般ユーザー向けには何も持っていない。

 ハイブリッド車や電気自動車を開発して特定のクルマだけで環境性能の向上を図るのではなく、すべてのクルマに適応できるような基本性能を向上させることで全体のレベルを底上げしていこうというのがマツダの基本的な考え方だ。限られた先進的なクルマを作るより、まだまだガソリン車全体の改良が必要との考えに立っている。

 その考えの中で2009年、年央に発売される新型アクセラに採用されるのがマツダi-stopと呼ぶアイドリングストップ機構だ。これは直噴エンジンと組み合わされる。直噴エンジン自体が燃費向上に貢献するものだが、その燃費をさらに10%以上向上させるためにマツダi-stopを採用する。

 アイドルストップ機構はすでにほかのメーカーの一部の車種に採用されているほか、今後は各社から次々に登場してくるはずだが、マツダのシステムは直噴エンジンの特徴を生かして、エンジンの再始動時にスターターモーターではなくエンジンの燃焼そのものを使う方式を採用する。これによって素早い再始動を実現したのが特徴だ。これにもすでに試乗しているが、比較的違和感の少ないシステムに仕上がっていた。

 マツダ車のうち2009年4月からの環境対応車普及促進税制に適合する乗用車は7車種あるが、その多くは自動車取得税と自動車重量税が50%低減されるもの。75%低減されるものは7車種のうちでも6グレードに限られている。マツダi-stopの導入によって適応車種の早期増加が望まれる。