2009年7月24日金曜日

水素REハイブリッドカー体験試乗!

 ガソリンもOKの水素ロータリーエンジンとハイブリッドシステムが組み合わされた「プレマシーハイドロジェンREハイブリッド」。どうのような走りを見せてくれるのか? 好奇心は高まるばかりだ。

経済産業省の公用車としてリース販売。

 マツダは「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言」というスローガンを掲げている。その中の環境戦略のロードマップには、内燃機関の徹底的な効率改善に取り組み、2015年までに全マツダ車の平均燃費を現在から30パーセント向上させるというマニフェストがある。

 世界中どこのメーカーも生き残りをかけて燃費性能の向上&CO2削減に必死だが、マツダはこれまで培ってきたハイドロジェン(水素)ロータリーエンジン技術と電気自動車技術を活かし、同社の3列シートのミニバン、プレマシーをベースとした水素ロータリー・ハイブリッド車を完成させ、経済産業省の公用車としてリース販売する運びとなった。

 2006年にRX−8ハイドロジェンREがリース販売されたが、今回のプレマシーはそれのハイブリッド版と考えていい。
 水素エンジンのメリットはガソリンエンジンの部品、組み立てラインが使用可能なため、比較的低コストで生産できること、そしてなによりもCO2の排出がゼロということである。

バイオ素材を積極的に導入したインテリア。

 ベースとなったプレマシーはマツダの主力ミニバン。3列目のシートを取り払い、そのスペースに大きな水素貯蔵用タンクが納まる。この水素タンクの圧力は日本国内の水素ステーションの標準的な圧力に適合させた35MPa。水素の充填口はガソリン給油口の左右対称の位置にある。

 バッテリーはリチウムイオンで2列目シート下に配置しているが、出っ張りなどの客室空間に干渉する部分がないので3名が乗車可能だ。水素タンクの後方には広くはないがラゲッジスペース(容量230リッター)が設けられている。

 RX−8ハイドロジェンREは、フル4シーターといっても後席はしんどい。やはりミニバンベースが正解だろう。
 インストパネルは標準車に準ずるが、ガソリンと水素の燃料切り替えスイッチや、使用燃料インジケーター、走行状態によるシステムの作動状態を示すエネルギーフローモニターが新たに装備されている。また、脱石油のシンボルカーらしく、内装材に植物由来の原料から作られるバイオプラスチック(シフトパネル、センターコンソール、水素タンクカバーなど)とバイオファブリック(シート表皮)が採用されている。

水素での満タン航続距離は200km。

 プレマシーハイドロジェンRE ハイブリッドは、シリーズ・ハイブリッド方式を採用している。ただし、これまでのシリーズ方式(ほとんどがEVの走行距離を伸ばすためのシステム)とは異なる。

 充電効率のいい回転数で定常運転させず、アクセル操作によるエンジン回転(=出力)に比例してジェネレーター(発電機)の発電量が増減し、モーターの出力がそれに同期するのだ。つまりエンジンとモーターが連動するダイレクトな運転感覚になっている。

 モーターは「巻き線切り替え」という、走行中瞬時にコイルの巻き線を切り替えることが可能な高性能タイプ(出力は110kW)で、これまでは産業用にはあったが自動車用としては初デビューとなる。

 試乗時間はごくわずかだったため、動力性能については正直なところよくわからないが、発進加速の感じからするとごく普通のクルマ。ということは実用上はなんら不足のないレベルということになる。

 動力性能はさておき、RX-8ハイドロジェンREに大差をつけたのは水素での満タン航続距離で、約2倍の200kmに伸びたことだ。

ハイブリッド動作を5つのパターンで解説。

 シリーズ方式のハイブリッド車が、走行状況によってどのように作動するかをご説明しよう。

 1.発進時=バッテリーからの電力でモーターを駆動。減速機、デファレンシャルを介してタイヤを回す。急発進時などより大きな駆動力が必要な場合はエンジンが始動してモーターへの供給電力量を増やす。
 2.走行時=速度が上がるとエンジンが始動し、エンジンに直結したジェネレーターによって発電。インバーターを介して送られた電気でモーターを駆動して走行。
 3.加速時=坂道、追い越しなどより高い駆動力が必要な場合、エンジンでの発電に加えてリチウム電池からも電気を供給する。
 4.減速時=モーターを発電機として使用。その電気で電池を充電する。
 5.停止時=エンジンはアイドリングストップするが、電池の残量によっては充電のためにアイドリングする。
と、こんな具合。

 水素、ガソリンの燃料切り替えもやってみたが、ごく自然だった。

将来に期待の持てる水素REの素性のよさ。

 水素、またはガソリンでの走行が可能なロータリーエンジン搭載のハイブリッド車の将来はどうなるのだろうか。マツダではFC(=燃料電池)車に比べ、まず第一にコスト、信頼性、バイオ燃料との併用性などで実用性において有利と判断し、今後の脱化石燃料時代に備えたいという意欲に燃えている。

 水素REは低純度水素でも利用が可能というメリットもある。日本国内で供給可能な低純度水素(副生水素)はクルマの台数に換算すると、500万台分あるといわれている。

 問題は水素ステーションの普及だ。現在は技術実証段階。今後は、2015年までに、一般ユーザーへの普及開始を目指すという。
 マツダの本拠地である広島近郊の都市部、水島、福山、周南を結ぶ水素ハイウエイ構想も検討中という。海外ではノルウエーのオスロ−スタバンゲル間580kmに水素ハイウエイ計画がある。

 将来の自動車は主動力源が電気モーターとなり、内燃機関はハイブリッドシステムをアシストするだけの道具となってしまう可能性もある。そのときにCO2を排出しない水素ロータリーエンジンは、強い競争力を発揮するだろう。