◇自動車・電機、環境対応車向けタッグ
ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)など環境対応のエコカーの普及が加速する中、自動車向け高性能電池の量産・開発競争も過熱している。次世代電池の本命とされるリチウムイオン電池の開発では、トヨタ自動車や日産自動車など自動車各社とパナソニック、NECなど大手電機・電池各社が連合を組み、成長市場の主導権獲得に躍起だ。【和田憲二】
「低コストで信頼性の高いリチウムイオン電池を真っ先に提供していく」。三菱自動車が世界初の量産EV「i-MiEV(アイミーブ)」の7月発売を発表した今月5日、心臓部となるリチウムイオン電池を開発したジーエス・ユアサの依田誠社長はエコカー向け電池市場での覇権取りに自信を示した。
現在のエコカーの主流であるHVのホンダ「インサイト」やトヨタ「プリウス」は安価なニッケル水素電池を搭載しているが、より燃費効率を高めたプラグインハイブリッド車や温室効果ガスを一切排出しないEVの普及までを展望すれば、小型でより出力の大きいリチウムイオン電池が主戦場。電池・電機各社は自動車メーカーと組んで、低コスト、小型、大容量化を目指してしのぎを削る。
日産自動車はNECグループと連合を組み、10年のEV発売に向けてリチウムイオン電池の性能向上を急ぐ。また、三菱自と組む電池専業のジーエス・ユアサはホンダとも連携する。トヨタはパナソニックと組み対抗する。
リチウムイオン電池などに強い日本の電機メーカーには海外自動車メーカーの引き合いもあり、三洋電機は独フォルクスワーゲン(VW)とHV用電池を共同開発。兵庫県加西市に新工場を建設し、11年度に年間12万台分以上の電池の量産体制に入る。東芝もVWとEV用電池開発で提携。新潟県柏崎市の新工場を15年度をめどにフル稼働させる。
日立製作所も米ゼネラル・モーターズ(GM)が10年に発売する計画のHV用に電池を供給する。「自動車不況」の中でも、各社は将来の成長のカギを握る高性能電池への積極投資を進めている。
◇「ニッケル」より高効率
リチウムイオン電池は、正極と負極の間をリチウムイオンが行き来することで電気を発生させる蓄電池。現在販売されているHV、トヨタの「プリウス」やホンダの「インサイト」に搭載されているニッケル水素電池に比べると、半分以下の体積で2倍以上の出力が可能だ。主にノートパソコンなどのデジタル家電や、電動アシスト自転車などに使われてきた。
民間調査会社の富士経済(東京都中央区)によると、リチウムイオン電池の08年度の国内市場は350億円だが、15年ごろからはエコカーへの搭載が本格的に進み、市場が急拡大する見込み。17年度には、国内だけでも市場は08年度の約3倍以上の1060億円に成長すると予測されている。