2009年6月28日日曜日

EV発売で充電器設置が相次ぐ、スーパー、コンビニにも広がる

 電気自動車(EV)が7月に相次いで発売される。これを受け、大手スーパーやガソリンスタンドなどにも充電器を設置する動きが広がってきた。

 環境負荷が小さいEVをめぐっては、1回の充電で走行できる距離が短いため、充電スタンドをきめ細かく配置する必要があり、充電拠点の増設を進める計画だ。また、充電器の設置場所を知らせるサービスを検討する企業も出ており、EV登場に伴って関連ビジネスも加速しそうだ。

 EVは二酸化炭素(CO2)を排出しない次世代エコカーとして期待が高まっているが、走行距離の短さが普及のネックとされている。充電1回あたりの走行距離は、三菱自動車が7月から法人向けに発売するEV「アイ・ミーブ」が160キロで、日産自動車が来秋投入予定のEVもほぼ同じになる。法人向けに7月に売り出す富士重工業の「プラグイン ステラ」では90キロにとどまる。

 このため、EVの利用者はこまめな充電が必要となるが、急速充電器は首都圏で首都高速道路などの40カ所、首都圏以外では約20カ所に過ぎず、充電インフラの整備が急務だ。
 このため、大手スーパーやコンビニに充電器を設置する動きが出ている。

 イオンでは昨年10月オープンした大型ショッピングセンター「イオンレイクタウン」(埼玉県越谷市)に急速充電器を導入。大手コンビニのローソンも8月以降、横浜市内の店舗に充電器を順次設置する計画だ。EVは急速充電器なら30分で80%の充電が可能なため、買い物中に充電してもらう。

 また、時間貸駐車場「タイムズ」を運営するパーク24では、東京都と神奈川県内で運営する駐車場に19基の充電器を設置し、利用客の増加を見込む。

 一方、昭和シェル石油では、神奈川県内の一部給油所に急速充電設備を設置するほか、コスモ石油も今年度中には神奈川県内の一部に充電器を配置する。

 ITサービス大手の日本ユニシスも4月、充電器の利用者認証や利用データなどを管理するシステムを開発した。通信ネットワークを使って充電スタンドの位置情報の提供も視野に入れている。

 政府は今年度から350万円程度の急速充電器について、購入費の半額を助成するほか、神奈川県も充電器設置に助成金を出すなど、充電器の設置を後押しする姿勢を示している。

2009年6月23日火曜日

日産のEV、ガソリン車と同価格に=来秋発売へ−ゴーン社長

 日産自動車のカルロス・ゴーン社長は23日、来秋発売する電気自動車(EV)の価格について、「通常の車に匹敵するものでなければならない」と述べ、補助金込みでガソリン車と同じ価格帯に設定することを明らかにした。大量生産でコストを抑え、出遅れているエコカー市場で巻き返しを狙う。横浜市での株主総会後、記者団に語った。

 三菱自動車と富士重工業が7月、EVを発売する。しかし、今年度の生産台数は三菱自の「アイミーブ」がわずか1400台で、価格は国の補助金制度を使っても約320万円と、同じ大きさの軽自動車と比べ2〜3倍。これに対し、日産は年産5万台からスタートし、補助金を活用して200万円以下の価格帯に抑えるとみられる。

新型 プリウス 霊柩車 発売

 沖縄県に本社を持ち、ストレッチリムジンなど特殊車両の製作・販売を行うアドバンスト・カー・エンジニアリングは23日、同社霊柩車ブランドの「LEQUIOS(レキオス)」に、新型『プリウス』をベースとした第3世代霊柩車『HYBRID』を追加、受注を開始した。

 同社の「レキオス」は、これまで葬儀業者の個性を引き出すアイテムとして『セルシオ』をベースとしたストレッチリムジン霊柩車を販売。霊柩車と一目で解る「宮型霊柩車」の乗り入れ禁止地域が増加しつつあることを背景に、新たなニーズに向けて提案を続けている。

 今回発表されたプリウスベースのハイブリッド霊柩車「HYBRID」は、ベース車に対し全長を1930mm延長し、全長6400mmとした。ストレッチリムジンとしては操舵しやすいサイズとしながら5名乗車が可能。同社テストでは燃費20.9km/リットルを計測し、低燃費、CO2削減を実現した霊柩車であるとしている。価格は787万5000円。


 現在2兆円の巨大産業とも言われる葬儀ビジネスにおいては、大手葬儀業者をはじめ差別化を図るため、植樹をしたり紙製の棺を使うなど、環境問題に取り組む葬儀業者も増えている。こうした状況に加え、環境にも配慮したいという遺族の要望にも対応するものとして、環境に優しいハイブリッドカーである新型プリウスをベースとした霊柩車を販売、葬儀業者の広告効果と利用客へのアピールを狙う。

 また、今回プリウス霊柩車とは別に、メルセデスベンツ『Sクラス・ブルーハイブリッド』をベースとした高級ストレッチリムジン霊柩車も受注を開始した。ウッドパネルや質感の高いレザー調仕上げのほか、6箇所に配置された照明により幻想的な空間を演出する。価格は1921万5000円からで、全長6300mmサイズの他、7500mmのロングモデルも設定する。






2009年6月20日土曜日

日産、米国で電気自動車量産 12年メド、年10万台規模

 日産自動車は米国で電気自動車の量産に乗り出す。
 
 米工場で中核部品の電池から車両の組み立てまで一貫生産。米政府が近く決める環境対応車向け低利融資の活用を狙い、2012年までに最大年産10万台規模の能力を持たせる。日産は日米に続き欧州や中国でも電気自動車の量産を計画。ハイブリッド車の量産でトヨタ自動車などに出遅れたが、電気自動車では世界の自動車大手に先駆けて量産体制を整え、環境対応車を拡充する。

 北米日産の本社があるテネシー州のスマーナ工場の中に、電気自動車生産用の組み立てラインを設ける。12年までに年5万~10万台規模の能力を持たせる。生産するのは小型の乗用車で、順次車種を追加する方針。電気自動車を海外で量産するのは日本勢で初めて。

補助申請受け付けスタート プリウス売れすぎ悲鳴?

 19日から申請受け付けが始まった「エコカー補助」の追い風を受け、トヨタ自動車のハイブリッドカー「新型プリウス」の売れ行きが好調だ。ただ、生産が追いつかず、今注文しても、納車は7カ月以上先の来年1月末から2月初旬になってしまう。納車前に車検切れを迎える客も少なくなく、販売店は代車を用意するなど対応に追われている。
 
 トヨタ自動車によると、新型プリウスの国内受注台数は発売1カ月で18万台に達した。「把握している限り前例がないペース」(同社)で、記録的なヒットとなるのは確実だ。
 
 新型プリウスを販売する福岡トヨタ(福岡市)には、これまで約2200台の注文があったという。売り上げ台数は全車種の7割に達し、発売時点で納期まで数カ月の待機期間が発生。その間に車検が切れる客には約100台の代車を無料で貸し出してきた。しかし代車も足りなくなったため、現在は注文時に伝えた納期日がさらに延びた客などを対象に、重量税を除く車検代を同社が負担するなどして対応している。
 
 一方、福岡トヨペット(同)は、新型プリウス約1900台の注文を受けており、納車が来年1月以降になる見通しだが「待機客が多すぎる」として特別な対応は行っていないという。
 
 福岡トヨタは「人気なのはありがたいが、待っている間に転勤などでキャンセルが発生したり、客の気が変わるのが心配」と気をもんでいる。

2009年6月19日金曜日

ナフカより、手の届くEVカー、『e-ZONE』リリース




 NPO法人ナフカより、ゴルフのカート等を製造する韓国メーカーのEVカー、『e-ZONE』がリリースされた。

 三菱自動車の『i−MiEV』や、富士重工の「プラグイン・ステラ」など、ここのところハイブリットカーに次ぐ次世代カーとして、EVカーの登場が目白押しだ。そんな波に乗るように、『e-ZONE』も来月には発売にこぎ着けられるようだ。

 本日より東京ビッグサイトにて行われている『スペシャルインポートカーショー』にて現物が展示されていた。

 話を聞くところによると、充電方法は家庭用電源によるプラグイン方式で、フルチャージによって50〜70km程度の連続走行が可能との事。また、パワーの肝となるバッテリーは、リチウムではなく鉛にすることによってコストを大幅削減、補助金制度を利用すれば200万円以下で購入できるとの事で、上記の2車種が300万円台である事を考えると、圧倒的にリーズナブルである。

 デザイン的にもパッと見はイタリアンな雰囲気があり、Aピラー部分や内装の所々にビビットな色を配するなど、決して事務的で無機質な感じは無い。

 ただし、55km/hまでの最高速度や、2人乗り仕様のみなど、制約は若干あるものの、都市生活における日常の平均走行距離が30kmだったり、平均時速が40km/hであることを考えると、この『e-ZONE』はまさに現実的なEVカーとして、エコの時代にマッチした新しい乗り物といえよう。

詳しくは、『e-ZONE』サイトにて確認されたし。

2009年6月17日水曜日

トヨタ、「ハイブリッド」クラウン廉価版 機能絞り特別車


 トヨタ自動車は16日、ハイブリッド車「クラウン ハイブリッド」に特別仕様車を設定して7月1日に発売すると発表した。ベース車の標準グレードをもとに、機能の一部を絞り込んだ。価格もベース車から大幅に引き下げるとともに、エコカー減税の対象であることもアピールし拡販を狙う。

 特別仕様車「スペシャルエディション」は540万円で、ベース車から約70万円引き下げた。重量税、取得税はゼロになる。排気量3500ccのV型6気筒エンジンで、FR(後輪駆動式)車。

リチウム電池の開発競争激化 高性能、小型化へ

 ◇自動車・電機、環境対応車向けタッグ
 ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)など環境対応のエコカーの普及が加速する中、自動車向け高性能電池の量産・開発競争も過熱している。次世代電池の本命とされるリチウムイオン電池の開発では、トヨタ自動車や日産自動車など自動車各社とパナソニック、NECなど大手電機・電池各社が連合を組み、成長市場の主導権獲得に躍起だ。【和田憲二】

 「低コストで信頼性の高いリチウムイオン電池を真っ先に提供していく」。三菱自動車が世界初の量産EV「i-MiEV(アイミーブ)」の7月発売を発表した今月5日、心臓部となるリチウムイオン電池を開発したジーエス・ユアサの依田誠社長はエコカー向け電池市場での覇権取りに自信を示した。

 現在のエコカーの主流であるHVのホンダ「インサイト」やトヨタ「プリウス」は安価なニッケル水素電池を搭載しているが、より燃費効率を高めたプラグインハイブリッド車や温室効果ガスを一切排出しないEVの普及までを展望すれば、小型でより出力の大きいリチウムイオン電池が主戦場。電池・電機各社は自動車メーカーと組んで、低コスト、小型、大容量化を目指してしのぎを削る。

 日産自動車はNECグループと連合を組み、10年のEV発売に向けてリチウムイオン電池の性能向上を急ぐ。また、三菱自と組む電池専業のジーエス・ユアサはホンダとも連携する。トヨタはパナソニックと組み対抗する。

 リチウムイオン電池などに強い日本の電機メーカーには海外自動車メーカーの引き合いもあり、三洋電機は独フォルクスワーゲン(VW)とHV用電池を共同開発。兵庫県加西市に新工場を建設し、11年度に年間12万台分以上の電池の量産体制に入る。東芝もVWとEV用電池開発で提携。新潟県柏崎市の新工場を15年度をめどにフル稼働させる。

 日立製作所も米ゼネラル・モーターズ(GM)が10年に発売する計画のHV用に電池を供給する。「自動車不況」の中でも、各社は将来の成長のカギを握る高性能電池への積極投資を進めている。

 ◇「ニッケル」より高効率
 リチウムイオン電池は、正極と負極の間をリチウムイオンが行き来することで電気を発生させる蓄電池。現在販売されているHV、トヨタの「プリウス」やホンダの「インサイト」に搭載されているニッケル水素電池に比べると、半分以下の体積で2倍以上の出力が可能だ。主にノートパソコンなどのデジタル家電や、電動アシスト自転車などに使われてきた。

 民間調査会社の富士経済(東京都中央区)によると、リチウムイオン電池の08年度の国内市場は350億円だが、15年ごろからはエコカーへの搭載が本格的に進み、市場が急拡大する見込み。17年度には、国内だけでも市場は08年度の約3倍以上の1060億円に成長すると予測されている。

2009年6月16日火曜日

EVスポーツ、優雅なツーリングイベント…テスラロードスター

 米国テスラモータースは9日、カリフォルニア州で「2009テスラロードスターラリー」を開催した。このイベントには、約40台のテスラロードスターが参加したそうだ。

 テスラロードスターは、2006年7月に発表。ロータス『エリーゼ』をベースに開発したスポーツカーで、最大の特徴は電気モーターのみで走行するEVという点だ。

 軽量なカーボンファイバー製ボディと強力なモーターの組み合わせは、0 - 96km/h加速3.9秒という1級のパフォーマンスを実現。1回の充電での最大航続距離は、約393kmと実用的だ。価格は、米国政府による7500ドル(約73万円)の補助金を申請すれば、10万1500ドル(約984万円)から。6月2日には、500台目がデリバリーされたばかりだ。

 テスラロードスターのツーリングイベントは、ロサンゼルス郊外の高級住宅街、マリブで実施。約40台のEVスポーツが隊列を組んで走行する興味深い映像は、動画共有サイトで見ることができる。

電気自動車元年 この夏市販の2モデルの特徴は


 2009年は、電気自動車(EV)元年になりそうだ。三菱の「i−MiEV」と富士重工の「プラグイン・ステラ」が7月下旬、相次いで市販される。当面は法人向けが中心だが、個人ユーザーの手に届く日も遠くなさそうだ。この2つのモデル、同じ軽規格のEVでもかなりコンセプトが違う。それぞれの特徴をまとめてみた。(アサヒ・コム編集部)

 i−MiEVのベースになった「i」は、06年度のグッドデザイン大賞を受賞した個性派モデル。その長いホイールベースを生かし、大容量のリチウムイオン電池を床下に、パワーユニットを荷室下に配置することで、ベース車と同じ居住性を実現した。まるでEV化を想定していたかのようなレイアウトだが、「正直に言うと偶然です。ただ、ベース車のレイアウトがEVに最適だったのは間違いない」(三菱自動車の橋本徹・MiEV事業統括室長)。

 メルセデス・ベンツはAクラスの設計にあたって、燃料電池搭載モデルを想定したレイアウトを採用している。今後、バッテリーの搭載位置を考慮した車両設計が増えてくる可能性はありそうだ。

 i−MiEVの航続距離は160キロ(10・15モード)ときわめて長い。ただ、充電時間は100Vで14時間、200Vでも7時間かかる。一晩ゆっくり充電して、休日のドライブに備えるといった使い方ができそうだ。

 一方、プラグイン・ステラの航続距離は90キロ(同)と意外に短い。ただ、充電時間も100Vで8時間、200Vで5時間と短く、こまめに充電して街乗りに使うのに向いている。「EVはシティーコミューターとして使われるはず」という設計思想が背景にある。

 プラグイン・ステラの長所は居住性の良さ。軽自動車は背の高い「トール型」が全盛だが、それをそのままEVにしたのが特徴だ。高い天井、広い窓、見通しのよい運転席は快適で、実用性も高そうだ。

 両車とも、インパネはごく普通で、未来のクルマに乗っている感じがしない。たとえばホンダのハイブリッド車「インサイト」は、エコ運転の度合いをカラーグラデーションで表示したり、若葉の形のアイコンで「採点」してくれたりといった「遊び心」がある。地味なインパネは、ユーザーによっては物足りない印象を受けるだろう。

 i−MiEVの価格は459万9000円で、国の補助金139万円を引くと320万9000円。プラグイン・ステラは472万5000円で、国の補助金138万円を引くと334万5000円。自治体によってはさらに補助制度があり、神奈川県の場合はi−MiEVで69万5000円、プラグイン・ステラで69万円の補助金が交付される。また、横浜市は4月から、年間平均走行距離が6000キロ以上の車を電気自動車に買い替える場合、30万円を補助する。両車とも「エコカー減税」の対象車種で、自動車取得税・重量税は100%免除される。

2009年6月15日月曜日

フォード、プラグインハイブリッド車の実証試験を開始


 米フォードは、カナダの電力会社などと共同で、プラグインハイブリッド車の実証実験を開始したと発表した。

 アメリカでも今後、自動車メーカーと電力会社によるEVプロジェクトが盛んに行われそうだ。写真は左から、フォードのナンシー・ジョイア氏、ナチュラルリソース&ワイルドライフのクラウド・ベチャード氏、ハイドロ・ケベック社長兼CEOのシエリー・バンダイ氏。

 フォードは、プラグインハイブリッド車「エスケープ・プラグイン・ハイブリッド(エスケープPHEV)」の実証実験を開始した。エスケープPHEV第一号車の納入先は、カナダの電力会社「ハイドロ・ケベック」。同社は、電気自動車やプラグインハイブリッド車に欠かせない充電装置の開発や供給を行うパートナーとして、PHEVの実証実験をサポートする。

 また、プロジェクトには、発電や電力の供給に関する研究を行う独立非営利団体「エレクトリック・パワー・リサーチ・インスティテュート」も参加。今回のプロジェクトは、この3者の共同で普及に向けたインフラ整備や新しいビジネスモデルの構築を目的としたものだ。

 エスケープPHEVは、フォードが2004年にSUV初のハイブリッド車として登場させた、「フォード・エスケープ・ハイブリッド」の進化型ともいうべきモデル。高効率なリチウムイオンバッテリーを搭載し、北米の一般的な家庭用電源(120V)で6〜8時間ほどで充電できる。

 フォードのPHEVは、充電された状態では電気自動車と同様にモーターのみで駆動する。そして電気がなくなると、そこからはハイブリッドカーとしてエンジンを始動させ駆動や充電を行う。電気のみで走ることのできる航続距離は30マイル(48km)程度と見込まれている。

 フォードの試算によると、年間1万8000km走行するユーザーの燃料コストは、ガソリンの場合で1383ドル。これに対し電気ならば244ドル程度と、約6分の1で済むという。

 フォードは、このプロジェクトに計21台のテスト車両を投入し、データ収集を行っていく。日本では、三菱自動車の「i-MiEV」やスバルの「プラグインステラ」などのEVが脚光を浴びているが、アメリカでも「電気で動くクルマ」が今後ますます注目を集めていくことになりそうだ。

2009年6月13日土曜日

ハイブリッド車用電池の生産能力、10年に1割上げ トヨタ

 トヨタ自動車はハイブリッド車に搭載するニッケル水素電池の生産能力を増強する。2010年の生産能力を従来計画より最大で1割引き上げ、110万台分にする方針。新型「プリウス」の受注好調に加え、今後幅広い車種でハイブリッド車を発売するのに備える。電池の生産体制を早期に強化し、環境対応車の需要を取り込む。

 ニッケル水素電池はトヨタが60%、パナソニックが40%を出資するパナソニックEVエナジーで生産している。同社の年産能力は現在約70万台。

2009年6月12日金曜日

ボルボがプラグインハイブリッドの市販化を発表


 ボルボが、スウェーデンの電力会社バッテンファール社と共同でプラグインハイブリッド車を開発し、2012年に市場に投入する。

 このプラグインハイブリッド車は、ディーゼルエンジンとモーターをあわせもつもの。家庭用電源で充電でき、フルチャージに要する時間は約5時間。もちろん回生ブレーキも装備され、ブレーキ使用時にも充電される。バッテリーには、高効率なリチウムイオンバッテリーを採用する。

 ボルボは、「プラグインハイブリッド車の価格は従来車より高くなることが予測される」としながら、燃料代については「モーターとの組み合わせによりディーゼル車の約3分の1に抑えられる」としている。

 車両開発は、ボルボとバッテンファールが共同で行い、資金も共同で出資する。ボルボが製造を担当し、バッテンファールは充電システムや電力供給装置の開発を受け持つ。

2009年6月9日火曜日

新プリウス、フル生産へ 堤工場公開、受注14万台超に



 トヨタ自動車は8日、ハイブリッド車「新型プリウス」を製造している堤工場(愛知県豊田市)の生産ラインを報道陣に公開した。複数車種を同時に造る混流生産方式を採用している堤工場だが、ラインを流れる車の大半はプリウス。ラインの速度も57秒に1台とほぼ最高レベルに達し、エコカー需要に活気づいている。

 堤工場はプリウスのほか、カムリ、プレミオなど計6車種を生産。現在10台に8、9台はプリウスで、1日当たり約1500台を造っている。旧型からプリウスの生産拠点となっており、昨年のトヨタ・ショック後も昼夜交代制の「2直」を維持してきた。さらに年初以降ゼロとしていた残業を徐々に再開し、6月の残業時間は1回の勤務当たり30~40分程度設けている。

 ライン従事者4400人のうち、約3割は他工場などからの応援組で増員している。

 新型プリウスの受注は5日現在で14万台超となり、納車待ち期間は半年程度。トヨタ車体の富士松工場(同県刈谷市)と合わせた月5万台の生産能力をフル稼働し、需要に対応する方針だ。

2009年6月7日日曜日

電気自動車「i-MiEV」がついに来月発売



 三菱の軽自動車「i(アイ)」をベースにした電気自動車i-MiEV(アイ・ミーブ)が、ついに発表された。この日は世界環境デーということもあり、まさに究極のエコカーともいえるi-MiEV(アイ・ミーブ)の発表にふさわしい日だった。

 i-MiEV(アイ・ミーブ)は、すでにテレビCMでもお馴染みとなっているが、電力会社などとの公道実証試験を重ね、ついに市販されることが決定した。とはいえ、メンテナンスリースが基本で、主に法人向けだという。価格も459.9万円で、補助金制度を利用しても320.9万円と、個人ユーザーには手の出にくい価格だ。

 生産目標台数は年間1400台。来年の4月には5000台規模へ生産を拡大し、量産化によるコストダウンで、一般ユーザーへの普及を拡大したいということだ。

 ベースとなったi(アイ)は、元々i-MiEV(アイ・ミーブ)の登場を見越して開発されただけに、ミッドシップに搭載されたエンジンやミッションが搭載されていた部分にモーターやインバーター、そしてガソリンタンクの位置にリチウムイオンバッテリーがきれいに納められている。

 そのためボディサイズや室内空間はi(アイ)とまったく変わりはないので、軽自動車規格での登録となる。気になる走りに関してはパワーは64ps、トルクは18.4kg-mを発生。パワーに関しては軽のターボ車と同等だが、トルクに関しては約2倍の数値をマークしている。

 車重は200kg近く重くなっているが、低回転から太いトルクを生み出すモーターのおかげで、パワー不足な印象はまったくない。またバッテリーなどの重量物が床下に搭載されるため、低重心で安定感ある走りを実現しているのだ。

2009年6月6日土曜日

リチウム電池で競争加速=「エコカー」拡大に照準-電機・重工

 日立製作所など電機メーカーを中心に、自動車向けリチウムイオン電池事業の競争が加速している。3日には三菱重工業も同事業への参入を表明した。自動車産業は現在、米ゼネラル・モーターズ(GM)破綻(はたん)など苦境が続くが、復活に向けハイブリッド車(HV)をはじめ環境性能に優れた「エコカー」がけん引役となるのは確実。その性能を左右するリチウム電池も急成長が必至で、各社とも経営資源を集中する。

 日本自動車販売協会連合会によると、HVは既に5月の新車販売の8台に1台を占めており、エコカー市場は着実に拡大し始めている。しかし一段の普及には電池性能の向上が不可欠。リチウム電池は現在主流のニッケル水素電池に比べ小型・大容量化が可能で、エコカー電池の本命だ。

 日立は今秋にも次世代型電池のサンプル出荷を開始するほか、2010年からはGMに量産型電池を月間30万個供給する予定。GM破綻で計画の遅延も予想されるが、「GMも再生には(HVなど)環境対応が不可欠」(日立ビークルエナジー)とし、計画に大きな狂いはないと見る。

 新規参入を宣言した三菱重工は、12年に量産を開始する予定。当初は自社製フォークリフト向けに供給するが、将来は電気自動車(EV)向けに売り込む。

 リチウム電池で世界シェアの3割を握る三洋電機は、年内にも兵庫県に新工場を建設。10年度から国内2カ所で量産体制に入り、複数の自動車メーカーに供給する考えだ。東芝も新潟県に新型のリチウム電池工場建設を計画しており、エコカーへの供給を見据える。 

無音・エコカー、事故防止で「音出し」検討

 ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などのエコカーは“普及元年”を迎える中、エンジン音がしないため、歩行者が気付きにくい電気モーターによる走行が、事故の原因になりかねないとの指摘が出ている。国土交通省によると、音が静かな静粛性が原因の事故は報告されていない。ただ、HVだけでも今後10年間で世界販売台数が20倍以上に増えるとの予測もあり、エコカーの本格普及に備え、国連が今春から国際基準の検討に乗り出したほか、国内メーカーも走行時に音を発生させる装置の開発を始めている。

 5月下旬の雨の日、都内で、トヨタ自動車のHV「プリウス」を運転していた30代の主婦は、思わずブレーキを踏んだ。狭い一方通行の道路を低速で走っていると、左前方を傘を差しながら自転車で走っていた高齢者が車の前に出てきたからだ。
 プリウスの場合、発進時や低速時はモーターだけで走行するため、歩行者は後ろから車が近づいてきたことにまったく気付いていなかったようだ。

 トヨタ自動車やホンダが今年発売した新型HVが絶好調の売れ行きをみせ、三菱自動車や富士重工業が相次いでEVの市販を始めたことで、街中を走るHVやEVは一気に増える。JPモルガン証券では、HVの世界販売台数は2008年48万台から20年に1128万台に拡大すると予測する。今後、主婦が経験したような“ヒヤリ”だけでは済まず、事故が起きてしまう懸念はぬぐえない。

 世界的にもこうした議論が高まってきたことを受け、国連は作業部会を立ち上げ、国際的な基準づくりに着手。米国では視覚障害者団体が政府に対策を要求している。

 日本でも国交省が検討を始めているが、現在は省令で、警報音と紛らわしい音を出すことが原則として禁じられている。このため、同省では「国際基準が決まれば、省令改正で例外的に対応できるようにする」としている。 

 一方、国内メーカーでも、トヨタグループが5月に視覚障害者ら約30人を対象に、モーター走行の音を体験してもらう催しを開くなど、安全への取り組みを積極化。走行時に音を出す装置についても、「オルゴールのような優しい音を出して走る案などがある」(関係者)としており、コスト面への影響も含め、検討を進めている。

プラグインハイブリッド車・電気自動車の充電スタンドを発売、豊田自動織機


 豊田自動織機は、プラグインハイブリッド自動車(以下、PHV)および電気自動車(以下、EV)用の「充電スタンド」を発売すると発表した。電気設備品の製造等を行う日東工業と共同開発したもので、7月下旬から販売を開始する。スタンドタイプと壁掛けタイプの2種類を用意し、価格は45万円程度を予定しているとのこと(台数、仕様により都度見積もり)。

 充電スタンドは自治体や企業向けに設計されたもので、充電用コネクタケーブルは財団法人日本自動車研究所が推奨する形式を採用。30分単位で4時間30分まで時間設定ができるタイマー充電機能やダイヤルロック機能を装備し、駐車場や公共施設などへの設置に適した仕様になっているという。また、過電流や感電に対する保護機能、充電中/エラー/タイマー残時間の表示機能を搭載する。そのほか、オプションで夜間自動点灯式の照明や電力モニターを設定。さらに、課金や通信への対応といった管理者向け機能の充実を予定している。

 なお、同社は6日と7日に横浜赤レンガ倉庫広場で開催される「エコカーワールド2009」に出展し、同充電スタンドを展示するとのこと。

 自動車メーカー各社からはPHVやEVの市場投入を7月以降に開始することが発表されており、同社では同時期に充電スタンドを供給することで、PHVやEVの普及に貢献したいとしている。


オリコ、エコカーローンの審査・保証業務を開始 北都銀行と提携

 オリエントコーポレーションは、北都銀行と提携し、北都銀行が6月4日から取り扱いを開始したエコカーを対象としたローンの審査・保証業務を行うと発表した。

 この商品は、ハイブリッドカーなどの、低燃費で低排出ガスのクリーンな自動車を購入するための資金需要に特化して対応する金融商品で、秋田県内の金融機関では初となるエコカーローン。
 
 商品名は「フルアシスト・エコプラン」で、対象は北都銀行の取引条件を満たし、オリコの保証が受けられる個人。連帯保証人は不要で融資額は10万円以上、500万円以内。

2009年6月4日木曜日

富士重の電気自動車、472万5千円 家庭用電源で充電


 富士重工業は4日、電気自動車「プラグイン・ステラ」の価格を税込みで472万5千円に設定したと発表した。電気自動車の購入時に交付される国の補助金を差し引くと、実際の負担は約335万円。さらにエコカー向けの特別措置で、自動車取得税と重量税の計13万4700円が免税になる。7月下旬から売り出し、09年度は法人や自治体向けに約170台の販売を予定している。

 軽自動車の規格で定員は4人。最高時速100キロ。リチウムイオン電池を搭載し、完全に充電すれば、最長で90キロ走行できる。家庭用100ボルトの電源での充電は、完全充電まで約8時間かかるが、専用の急速充電器では容量の80%を15分で充電できる。

 電気自動車は三菱自動車は7月に、日産自動車は10年後半に売り出す予定。

エコカー購入の補助制度、6月19日より申請を受付開始

 経済産業省は、環境対応車(エコカー)への買い換えや購入を促進する補助金申請の受付を6月19日に開始する。

 車齢が13年以上の車を廃車にして、エコカーを購入する場合、軽自動車で12万5000円、普通乗用車で25万円、トラックやバスは大きさに応じて40万—180万円の補助金を支給する。廃車にせず、エコカーを新たに購入する場合も、軽自動車は5万円、普通乗用車は10万円、トラックやバスは20万—90万円を補助する。

 新車の購入者がディーラーを通して審査機関に申請する。補助金の交付までに要する期間は、数週間程度になる見通し。

 政府が経済危機対策を発表した4月10日にさかのぼって申請できるが、低公害普及
促進対策費補助金など、国のほかの補助制度と重複して申請することはできない。

 同省は、環境性能のよい新車の買い換えと購入を支援することで、環境対策と景気対策を効果的に実現したいとしている。

トヨタ、プラグインハイブリッド車をリース販売 年末から

 トヨタ自動車は3日、家庭で充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)を2009年末から国内でリース販売すると発表した。

東京都など6都府県にハイブリッド車「プリウス」をベースにした車両を提供するのを皮切りに、約200台を自治体や企業に販売する。トヨタはPHVを一般のハイブリッド車と並ぶ環境対応車の軸と位置付けており、今回のリース販売を今後の量産化につなげる考えだ。

 経済産業省が主導するPHVや電気自動車の普及を狙ったモデル事業「EV・pHVタウン」に参画する。同事業に参加する青森県、新潟県、東京都、福井県、愛知県、京都府の6都府県にプリウスベースのPHVをリース販売する。

 国内のほか米国と欧州でも順次、リース販売を開始。米国では約150台、欧州ではフランスや英国、ドイツ、オランダで計150台以上を提供する計画。全体では約500台を販売する。

2009年6月3日水曜日

トヨタ:新型ハイブリッド「レクサス」 割安395万円で


 トヨタ自動車が7月に発売する高級車ブランド「レクサス」初のハイブリッド専用車の最低価格を、レクサス車で最も安い395万円にする方針であることが分かった。深刻な販売不振の中、低価格化で空前の受注を記録している新型プリウス(205万円~)に続き、レクサスでもハイブリッド車を割安で投入して連続ヒットを狙う。

 発売するのは5人乗りセダン「HS250h」。エンジンは排気量2.4リットルとプリウスの1.8リットルより大きく、内外装も質が高いため、400万円以上での販売も検討した。

 しかし、旧型より30万円近く安くした新型プリウスがエコカー減税も追い風となり、納車まで3カ月以上待ちとなる人気を獲得。レクサスでも、1月発売のスポーツタイプ多目的車(SUV)「RX」のハイブリッド仕様車(570万円~)がガソリン車より100万円程度高いにもかかわらず「レクサスで唯一、受注が社内計画を上回った」(トヨタ幹部)。

 このため、HSはレクサスで最も安いセダン「IS」の399万円より下げて買いやすくし、販売攻勢をかける。


トヨタ、「EV・PHVタウン」に参画し新開発のPHVを国内導入開始

 トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)は、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)の普及を目指す経済産業省のモデル事業『EV・PHVタウン』(注)に選定された自治体と連携し、PHVの国内導入を開始する。

 トヨタでは、3代目プリウスをベースに、トヨタ車の駆動用バッテリーとしては初めての採用となるリチウムイオン電池を搭載し、家庭用電源などからの外部充電を可能とする新型PHVの開発を進めている。国内市場への導入にあたっては、経済産業省が『EV・PHVタウン』として選定した地方自治体のPHV普及事業に協力し、2009年末以降、官公庁、自治体、法人などの特定利用者を中心に約200台のPHVをリースする。

 PHVは、市街地などでの近距離走行時はEVとして走行し、都市間などの中長距離走行時には従来のHV(ハイブリッド車)と同様に走行できるため、バッテリーの残存量や充電インフラの整備状況にかかわらず使用することが可能であり、電気エネルギーの利用促進によりHVを上回る燃費改善、化石燃料の消費抑制、CO2排出量削減、大気汚染防止、夜間電力利用によるさらなる経済性も期待できる。

 トヨタは、エネルギー多様化への対応において、現段階ではPHVが本格的な普及に最も適したエコカーであると考えており、PHVの市場導入を進めるとともに普及に向けて幅広い理解を得ていくため、日米欧のフリートユーザーを中心に、グローバルで合計500台程度を順次投入する。具体的には、米国で約150台を導入、欧州においてはフランスの100台を含め150台以上を導入する予定であり、英国、オランダ、ドイツにも導入を検討している。

 トヨタでは、エコカーのコア技術と位置付けるハイブリッド技術を駆使し、PHVのみならずEVやFCHV(燃料電池ハイブリッド車)についても開発を進めており、これら次世代環境対応車の開発・実用化を図り、石油消費の抑制、CO2排出量の削減とエネルギー多様化への対応等に寄与することによって、「サステイナブル・モビリティ」の実現に向けた取り組みを続けていく。

(注)『EV・PHVタウン』とはEVやPHVの本格普及に向け、国、自治体、地域企業、自動車メーカー等が連携してEV・PHVの導入、充電インフラの設置などの普及、環境整備などを集中的に行うモデル事業。今後、当該自治体が主体となって、本年夏を目処に実施に向けた「EV・PHVタウン 推進アクションプラン」を策定するとともに、本年度末を目処にその実証結果を取りまとめた「同マスタープラン」を策定する予定。

「ハイブリッドは面白い」プリウス開発者インタビュー

 ──今回でプリウスも3代目。まず、新型のコンセプトは何ですか。

 プリウスは、トヨタのHVのフラッグシップ(旗艦)です。HV市場の競争が激しくなっているなかで、プリウスがプリウスであり続けるために、初代から続いている「環境、燃費性能に配慮したエコカー」という、「プリウス・ブランド」の基本コンセプトは変えていません。3代目では、そのコンセプトに最新の技術を投入することで、独特な「未来感」を全体から醸し出せたらと考えました。

 ──購入者のターゲットは?

 これまでのプリウスの購入層は、50〜60歳代が多かったんです。子育てを終え、クラウンやマークXを下取りに出して、夫婦だけでダウンサイジングした車をゆっくり楽しもうという世代。プリウスなら自分たちも納得でき、他人から見られても恥ずかしくない、ということでしょう。

 3代目は、30〜40代を新たにターゲットとしました。この層は環境意識が高く、クルマ本来の楽しさも重要視しつつ、性能、機能だっておろそかにしない。お客様のすそ野を広げようと旧型よりも価格を抑え、5人家族でも選択肢に入れてもらえるよう、車内の広さを確保しました。

 決められた原価の中でも、あまりにチープにはしたくありませんでした。その工夫の一つとして、インストルメント・パネルの表面に葉脈をイメージした模様をつけました。

 ──そのほかの自慢のポイントは。

 太陽光発電システム(オプション)ですね。電動開閉式のルーフに取り付けたソーラーパネルで発電し、その電力で室内の換気を行う仕組みで、トヨタとして初投入した機能です。今までは日差しが強い日は、屋根付きの駐車場に止めておきたがっていた人も、屋外に停めたくなる。今までの固定観念を変えるシステムです。

 ──この世界的な大不況は、車作りに影響しましたか?

 去年の秋にはすべての基本仕様を固め、その後は品質向上に費やす時期だったので、不況が一気に進んでいく中でも、部品一つでもさわったり、変えたりする余地はありませんでした。

 ──大塚さん自身は、HVの開発をいつから手がけているのですか。

 エスティマの初代ハイブリッドが最初で、それからアルファード、エスティマのHV2代目、そして今回のプリウス3代目です。

 ──3代目プリウスのチーフエンジニアには立候補した?

 以前から「プリウスをやりたい」とは言い続けていました。そして、すでにもう愛着があるので、「4代目もやりたい」と宣言しています(笑)。2世代は担当しないと。ハイブリッドの開発はおもしろい。今まで考えなくてもいいことを考えるので、開発の幅が広がる。つまり開発の自由度が広がるのです。

 最近はすべての開発が「まずはプリウスから」という流れになってきています。でも「3代目」は難しく、たいてい失敗しがち。だからあまり成功するかどうかという結果は気にせず、プリウスのコンセプトはしっかり維持しました。工場から最初の1台が出てきた時は、ほろっと来て。「大切にされてね」と思いましたよ。娘とか恋人といった感覚? いや、車に対しては女性とか男性とか分けず、中性的なイメージですね。

 (次期社長の)豊田章男さんに誘われて、ドライバー3人の平均燃費などを競う、プリウスカップにも出ました。参加する前は「地味でつまらないんじゃないか」といった先入観がありましたが、実際にやってみると、タイムとコースを気にしながら、どこでエンジンとモーターを使うか考えるなど、とても知的でした。エコをテーマにしたモータースポーツも楽しめますね。

 4代目の開発もやらせてもらえるのなら、家庭用電源から充電できる「プラグイン・ハイブリッド」をメインの一つにしたいです。

 ──ライバルのホンダは、2月にHVの新型「インサイト」を発表しました。プリウスと良く比較されるインサイトをどう見ていますか。

 最初は200万円を切ると聞いて、正直びっくりしました。ただ単に「シビック」をダイエットさせただけでなく、内装などは割り切りつつ、性能は維持していますね。でもインサイトのハイブリッドシステムはエンジンが主役。モーターだけでも走れる「プリウス」と完全に重複することはないな、と思いました。

 ──3代目プリウスへの反響、評価に対しては。

 5月18日の販売開始前に8万台の予約だなんて、信じられませんでした。「これまでの最高だった初代『イスト』の予約4万7000台を超えたらいいなあ」くらいに考えていたので、全社的に想像外だったと言えます。

 でも、本当の評価はまだわかりません。今はエコカー減税や補助金なども後押ししているかもしれないので、1年後はどうなっているか・・・。

 街中、プリウスだらけになったら、逃げていってしまう方もいるでしょう。今後は何か外部デザイナーとの特別コラボといった可能性も探る必要性があるかもしれませんね。

 <大塚 明彦(おおつか・あきひこ)>
 1962年生まれ、大阪府豊中市出身。86年、トヨタ自動車入社。93年、スープラの2代目で振動騒音開発を担当し、エスティマやアルファードの初代HVの製品企画の主担当員に。04年からプリウス3代目の開発に携わってきた。趣味はドラム、釣り、料理。愛車はアルファロメオGTV。

2009年6月2日火曜日

エコカー戦争で最後に笑うのは日産? “量産型”電気自動車の意外な正体

2009年8月2日、日産自動車は量産型EVを世界初公開する。その正体とは、これまでのEVのイメージを覆す「5ドアファミリーカー」だ。08年度当期純損失は2337億円、2009年度当期純損失予想が1700億円という厳しい状況の中、カルロス・ゴーン社長は、2010年からの量産型EV生産体制を正式発表。なぜ日産は、ここまでEV開発に積極的なのだろうか。日産におけるEV事業の重要性を探った。

「やはり、5ドア車だった!」日産「量産型EV」突然の発表に、驚きを隠せなかった。

 2009年5月15日(金)、EVS24(第24回・EVと燃料電池の世界シンポジューム)が北欧ノルウェー・Stavanger市で開催された。その3日目に、Nissan in Europeの商品企画担当・上級副社長のPierre Loing氏が「Nissan puts ZERO emission leadership at the center of its global product strategy」という15分間の講演を行った。

日産の量産型EV「5ドアファミリーカー」。Nissan in Europe上級副社長Loing氏が、EVS24にて突然発表した
 その中の、プレゼン画面15ページ目。5ドア車のイラストが突然映し出された。

プロジェクタースクリーンを見ながら、Loing氏が言った。

「これが、日産のEVプロダクションモデル(量産車)だ。EVというと一般的に、シティコミューター(市街地での低速走行車)と思われがちだ。しかし、日産はそうした既存のEVに対するイメージを覆す。その回答がこの『ファミリーカー』だ」。

 さらに、こう付け足した。

「2010年から日米で、ヨーロッパでは2011年に発売を開始する。また今年8月2日、日本の横浜の日産新社屋で、この車両を一般に公開する」。

EVS24開催事務局から事前配布されていたCD内には、このイラストは入っていなかった。

 そのため、心の準備が出来ていなかった筆者はかなり驚いた。

 その後、日産の本社広報部商品広報担当部署(東京・銀座)に問い合わせたところ、以下の回答があった。「8月2日に、横浜の新社屋移転に伴うギャラリーオープンイベントがある。だが、そこでEVを公開するかどうか、現在のところ未確定。また、決算発表でゴーン会長は、(EVについては)8月上旬にEVを公開すると発言している」。

「8月上旬」に首都圏で、日産が参加するモーターショーや各種自動車関連の大型イベントの予定はない。つまり、ノルウェーでのNissan in Europeの幹部の発言通り、8月2日(日)、JR横浜駅東口の日産自動車・新社屋で、量産型EVの世界初公開が行われることに間違いない。

 では、その実態について、さらに掘り下げてみよう。

「日産の顔」が明かすEV事業の未来

 筆者は毎年、世界各国の主要モーターショーを現地取材している。そうしたショー現地で必ずといってよいほど、顔を合わす人がいる。日産自動車・常務役員・デザイン本部長の中村史郎氏だ。中村氏は、フェアレディZのTVコマーシャルなどにも登場、またモーターショーでは英語でのプレゼンテーション役として舞台に登場する。そうした経緯で、カルロス・ゴーン会長と共に、世界各国で一般的に知られている「日産の顔」である。ジャーナリストに対しても、気さくに話し、ざっくばらんに日産戦略を語ってくれる。


日産自動車・常務役員・デザイン本部長の中村史郎氏。カルロス・ゴーン会長と共に、世界各国で知られている「日産の顔」だ。後ろに見えるのは、2008年9月パリオートショーで発表されたEVコンセプトカー「Nuvu」
 筆者がここ数年、中村氏と会う度に聞いていたのが、新型「GTR」についてだった。いつ出るのか、エンジンの仕様は、ボディスタイリングは、などとその正体を徐々に探っていった。

「GTR(通称35GTR)」は2007年東京モーターショーで華々しくデビューした。その後、中村氏と筆者の会話の主題は「EV」へと変わった。そうしたなか、2008年9月、仏パリーショー。日産はファッショナブルな2ドアEVのコンセプトモデル「Nuvu」を発表。その際、中村氏は「これは量産しない。あくまでもデザインスタディ。EVはこうした形とも、(EV試験車両の)Cubeとも全く違う形状をしている」と語った。また、こうも言った。「2010年に、EVの量産型を市場投入する。最初は日米欧が主体となる。2012年からは世界各地での販売を進める。そして、そこから3年ほど(=2015年)先には、EVの他モデル化を進める。スポーツカー、ミニバンなど、様々な可能性を現在考えている」。

 そして2009年3月、米ニューヨークショーで中村氏は「やっと最終デザインが決まった。非常に近いうちに、量産型EVを見せたい。(2009年10月の)東京モーターショーでは確実に登場させる。EVは、ガソリン車に比べると構成部品が少ないため、小さな事業体でも簡単に作れてしまう。日産としては、『これぞ、自動車メーカーが作ったEV』という凄い物をお見せする。ボディスタイルの可能性としては、居住性を考慮すれば5ドアハッチになるの順当だ」と、ニタリ顔を見せた。

 その言葉を裏付けるのが、今回ノルウェーでのEVS24で公開された「5ドアファミリーカーのイラスト」。日産のEV戦略将来像を明確に示唆している。

「EVの日産」を印象付けた巧みな戦略とは

 それにしても、日産のEV戦略は実に巧妙だ。

 実は日産、1990年代では量産型EVについて世界最先端を突っ走っていた。1996年には世界初のリチウムイオン二次電池を搭載した「プレーリージョイEV」を、1999年には小型EVの「ハイパーミニ」を市販していた。

 その頃、トヨタ「RAV4」、ホンダ「EV Plus」などが少量販売されており、これが、日米での第2次EVブームとなった。しかしEVブームは、燃料電池車開発と入れ替わるようにトーンダウン。さらに日産がルノー資本となりゴーン体制が敷かれると同時に、日産のEV開発は事実上凍結され、「ハイパーミニ」などのEVは販売中止となった。自動車業界の各種関係者の証言によると、日産のEV開発に携わった当時の技術者たちは「ハイパーミニ」開発中止後、新たなる活躍の場を求めて各部署(または社外)へと散っていった。

 それから5年が過ぎた、2005年東京モーターショー。日産は近未来型シティコミューターのコンセプトモデル「Pivo」を登場させた。ちょうどその頃、三菱自工が「2010年までに軽自動車ベースのEV量産(=現在のiMiEV)の開始」を発表するなど、世間では再びEVへの関心が高まり始めていた。「EVの第三次トレンドの風」を感じ取った日産は、量産型EVの開発を再開したのだ。

 筆者の取材によると、その頃から日産は、米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊にある、EVベンチャー企業「AC Propulsion」社と共にアメリカでの市場調査と走行テストを続けていた。同社は、民生用(ノートパソコン用が主体)のリチウムイオン二次電池「18650」(直径16mmx長さ65mmの円筒型)による電池パック技術開発で世界的に有名だ。

 同社技術は、米TESLA「Roadster」(初期開発段階での特許を販売)やBMW「mini E」(同社技術の完全移植)で使用されている。だが、日産はこれと平行して、NECトーキンが開発した、薄型で軽量なラミネート型リチウムイオン二次電池を搭載するEVも開発していた。その後、日産と「AC Propulsion」との関係は突然終り、ラミネート型の採用が決定した(AC Propulsion社・Tom Gage社長への直接取材による情報)。

 2007年に入ると、日産EVの動きが徐々に加速した。同年9月、独フランクフルトショーでスポーティな2ドアEVのコンセプトモデル「Mixim」発表、同年10月東京モーターショーでは「Pivo Ⅱ」と、立て続けにEVが登場。三菱iMiEV、富士重工業「プラグインステラ」などとは違い、EV量産型の姿カタチがハッキリしていないにもかかわらず、「EVの日産」のイメージが市場に広がっていった。

 そして2008年8月、ついに「走る日産EV」が公開された。神奈川県横須賀市の追浜工場内テストコースで開催した「2008年先進技術説明会&試乗会」で、「Cube」のボディをまとった「EV-01」を走らせたのだ。これによって「日産の量産型EVは明らかに存在していて、発売はすぐ目の前」と、国内外に強くアピールした。

EVは日産にとって「最重要課題」

日産自動車・横浜新社屋。「5ドアハッチの量産型EV」が2009年8月2日に公開される
 2009年5月12日、日産は2008年度の決算を発表。同年度当期純損失は2337億円、2009年度当期純損失予想が1700億円と、厳しい内容となった。だがこれと同時にゴーン会長は、量産型EVの2010年からの生産体制ついて正式発表した。モーターは日産の創業の地である日産横浜工場(横浜市神奈川区宝町)、インバータは日産座間事業所(神奈川県座間市広野台)で製造する。

 また、日産EVの肝である、薄型軽量のラミネート型リチウムイオン二次電池はNECトーキンでセル(電池個体)を製造し、モジュール化(数個のセルの集合体)は、NECトーキンと日産の合弁会社 オートモーティブエナジーサプライ(出資比率:日産自動車51%、日本電気/NECトーキン49%)が行う。電池パック(モジュールの集合体)と車両の最終組み立て作業は日産追浜工場で行う。

 そして、本稿最初にご紹介の通り、「5ドアハッチの量産型EV」が2009年8月2日、日産自動車・横浜新社屋で公開される。

 ではどうして日産はこれほどまでに、EVに積極的なのか。筆者が考える理由は以下の5つだ。

(1)以前に本サイトで紹介したように(「間違いだらけの“電気自動車”報道!トヨタ・ホンダが本格参入しない本当の理由」)、トヨタとホンダが量産型EVに対して「コンサバ」。世界市場で、日系自動車メーカーとしての立ち位置が、トヨタ、ホンダに次ぐ「万年ナンバー3」のイメージがある日産。トヨタ、ホンダとは「全く別のスタンス」をEVで明確にすることで、先端技術イメージの「ドンデン返し」を狙っている。

(2)HEV(ハイブリッド)で現在、日産が市販しているのは2006年に北米で発売された「アル ティマ(前輪駆動の中型セダン)ハイブリッド」のみ。これは、ハイブリッド技術はトヨタ系アイシンAW社と提携。プリウス、インサイトなど「目の前のハイブリッド商品」がない日産にとって、「ハイブリッドの次」を市場に見せることによって、トヨタ、ホンダへ顧客が逃げることを食い止める。その「顧客へのイメージの時間差」を利用して、ハイブリッド車のラインアップを進める。

(3)日本での第3次EVムーブメントは、三菱自工と富士重工、さらには東京電力などの助力によって、すでにシッカリと足場が固まっている。つまり、「後出しジャンケン」となる日産EVにとっては、市場への普及効率における費用対効果が高い。

(4)リチウムイオン二次電池の、他自動車メーカーなどへの販売。モジュール化を行うオートモーティブエナジーサプライの出資比率を51%として、社外への販売の意向を強めた。また、EVと同じく将来的に急激な市場拡大が見込める、太陽光発電用の蓄電池事業にも期待する。

(5)横浜への本社社屋移転と、EVの「未来への新たなる一歩」というイメージを合致させ、「新生・日産」をアピールする。また元来、横浜生まれの日産(本社登記も以前より横浜)だが、銀座本社社屋、栃木工場、追浜工場など、「日産の故郷が明確化されていない」という印象が長年ある。EVによって神奈川県と横浜市との関係を強化し「地方に根ざした世界企業」をアピールする。横浜市とは「開港150年」との同調し、神奈川県とは「EVイニシアティブかながわ」構想とのさらなる連携を狙う。そのため、当初2010年に予定していた横浜新社屋完成を、2009年に前倒しした。

 こうして各方面から見てみると、日産の量産型EVは日産の「ウルトラC」だと言える。

 日産の将来像を強くイメージづける、最重要課題なのである。

 そしてまた、近い将来における日産EVへの関心事として、EVインフラ関連のベンチャー企業・米ベタープレイス社と日産が「実際にどのような連携を組むのか?」が気になる。この件について巷では、様々な憶測が乱れ飛んでいる。この件を含めて今後も、日産EVについてさらに取材を進めていくつもりだ。

三菱、i-MiEV 市販モデルを公開


 三菱自動車は、6月6、7日に横浜赤レンガ倉庫広場で開催される「エコカーワールド2009(低公害車フェア)」に電気自動車『i-MiEV』の市販車を、今年夏の市場投入に先駆けて一般公開すると発表した。

 今回で24回目を迎えるエコカーワールド2009では、大気汚染防止、地球温暖化対策に有効な低公害車への理解を深め、その普及促進を目的に、各種のエコカーを集めて展示するとともに、エコドライブの普及啓発などの活動を展開する。
 
 i-MiEVは、地球温暖化・石油エネルギー代替への対応として、軽乗用車の『i』をベースに、大容量リチウムイオン電池と小型・高性能モーターを搭載した電気自動車。今回のエコカーワールド2009には、このi-MiEVの市販車を1台展示するほか、試乗用として現行の試験車も1台用意して、来場者にi-MiEVの走りを実際に体験してもらう。
 
 このほか、三菱自動車ではi-MiEVに加えて、環境対応車普及促進税制に適合した「ミニキャブCNG(圧縮天然ガス)車」や、2005年基準排出ガス75%低減レベルを達成した「ミニキャブLPG(液化石油ガス)車」、燃料としてCNGとガソリンの併用が可能な「ミニキャブバイフューエル」も出展する。
 ☆「i MiEV」は市販化にともない「i-MiEV」(ハイフン付き)に車名を変更。