メルセデスベンツ『Sクラスハイブリッド』の走りで特徴的なのは、「ブースト」機能と「ECOスタートストップ」機能だ。
ブースト機能は、加速時にモーターが補助をすることで、燃料消費を抑えながらパワフルな加速を実現するもの。まるでターボのようにモリモリと湧き出るようなトルクが感じられることから名付けられたのだろう。
ECOスタートストップ機能は、減速時に15km/h以下となると、アイドリングをストップさせて、クルマが停止後に発進する際、モーターで走り出しながらエンジンをスタートさせる。
減速時は軽くブレーキペダルを踏むと、まず回生ブレーキが働いて慣性エネルギーを電気エネルギーとして蓄える。さらにブレーキペダルを強く踏むとブレーキが作動する。
通常のガソリン車でも減速時は燃料カットが働いている。しかしアイドリング付近にまで回転数が落ちると、ストールを防止するために燃料を噴射しているのだ。ECOスタートストップ機能は通常の燃料カット領域を超えて完全に停止するまで燃料を一切噴射することがない。次に発進する時まで燃料をセーブするのだ。
一方、トヨタ『プリウス』やレクサス『LS600h』などにあるEVモードは、このクルマには存在しない。同じパラレル式のホンダ『インサイト』も低負荷時にはモーターだけで走行することはできるが、Sクラスハイブリッドの場合インサイトのようにモーターだけで走行させるにはエンジンの抵抗も大きく、ボディも重いため、モーターやバッテリーの能力がさらに必要となる。そうするとガソリン車との共用部分は少なくなり、車両価格も跳ね上がることになる。
そう考えれば、EVモードを採用せず、コンパクトなハイブリッドシステムにまとめたのは合理的だということが分かる。燃費のカタログデータを見ても効果は明らかだ。Sクラスハイブリッドは「S350」に比べEUの排出ガス測定サイクルでも28%燃費が向上しており、10・15モードでは33%に拡大する。日本での実燃費ではさらに差が開くことになるだろう。
ちなみに今回のマイチェンでSクラスは電動パワステとなったが、Sクラスハイブリッドはエアコンのコンプレッサーも電動。だからアイドリングストップでも十分に快適性は確保されている。