ダイムラーは2日、メルセデスベンツ『ブルーゼロE-CELLプラス』の先行量産モデルを初公開した。家庭用電源から充電できるプラグインハイブリッド車で、最大約100kmをモーターだけでゼロエミッション走行。バッテリー残量が少なくなると充電専用のエンジンが始動し、航続距離は約600kmまで伸びる。
ダイムラーは1月のデトロイトモーターショーに、3台の『コンセプトブルーゼロ』を出品。次期『Bクラス』を示唆したコンセプトカーと見られ、サンドイッチフロア構造の床下にリチウムイオンバッテリーなどの駆動装置を収めることで、同一ボディを使用しながら3種類のパワートレインを搭載するという離れ技をやってのけた。
コンセプトブルーゼロのパワートレインは、モーター、モーター+エンジン、モーター+燃料電池の3種類。車名はEV仕様が『コンセプトブルーゼロE-CELL』、ハイブリッド仕様が『コンセプトブルーゼロE-CELLプラス』、燃料電池仕様が『コンセプトブルーゼロF-CELL』だった。ボディサイズは全長4220×全幅1890×全高1590mmだ。
今回、ダイムラーが発表したのは『コンセプトブルーゼロE-CELLプラス』の進化形。1月のデトロイトのモデルよりも各部を熟成させ、市販直前のプレプロダクションモデルが完成した。
ブルーゼロE-CELLプラスは、GMのシボレー『ボルト』と同様に、基本はモーターで走行するEV。充電専用のエンジンも搭載しており、バッテリー残量が少なくなると、エンジンを回して充電を行う。GMはボルトを「エクステンデットレンジEV」と呼ぶが、ダイムラーはブルーゼロE-CELLプラスを、「レンジエクステンダー」と名づけている。
システムの核となるのは、小型モーター。最大出力136ps、最大トルク32.6kgmを発生するモーターをフロントアクスルに搭載。2次電池は蓄電容量18kWhのリチウムイオンバッテリーで、0‐100km/h加速11秒以下、最高速度150km/h(リミッター作動)の実用性を確保した。
モーター単独での最大航続距離は約100kmだが、バッテリー残量が少なくなると充電専用のエンジンが始動。このエンジンはスマート『フォーツー』用の1.0リットル直3ターボ(68ps)で、ジェネレーターを回してモーターに電力を供給するとともに、バッテリーの充電を行う。この結果、最大航続距離は約600kmまで伸びる。欧州複合モード燃費は26.4km/リットル、CO2排出量32g/kmと環境性能は非常に優秀だ。
ブルーゼロE-CELLプラスは、家庭用コンセントからも充電可能なプラグインハイブリッド車。欧州で一般的なコンセントなら、約6時間で充電は完了する。また欧州の市街地に設置される急速充電器にも対応しており、50km程度の航続距離の容量をチャージするなら、約30分でOK。フル充電でも約1時間という実用性を備えている。
室内は2重フロア構造のおかげで、居住スペースはまったく犠牲にしておらず、大人5名が乗車できる空間を実現。荷室容量も500リットル(VDA計測法)と使い勝手に優れる。
ブルーゼロE-CELLプラスは、15日に開幕するフランクフルトモーターショーで正式発表。ダイムラーは2010年に市販バージョンを公開する見込みだ。今年のフランクフルトには、トヨタも新型『プリウス』のプラグインハイブリッド仕様を出品することになっており、環境対応車の覇権争いがいっそう激しさを増すことも予想される。