日産自動車は2日、日米で2010年後半に発売予定の電気自動車(EV)を、横浜市西区に建設した新本社の完成セレモニーで初公開した。名称は「葉」を意味する「リーフ」。日産は量産EVとして先行販売する三菱自動車などを大幅に上回る、国内で初年度5万台の生産に踏み切る。ハイブリッド車(HV)開発でトヨタ自動車やホンダに後れを取った日産だが、二酸化炭素(CO2)など排出ガスが全く出ないEVで、次世代エコカーの主導権を握る考えだ。
同車は5人乗りのコンパクトカーサイズ。リチウムイオン電池の薄型化によって、広い室内空間を確保、三菱自が7月に発売した軽自動車ベースの「アイ・ミーブ」との差別化を図る。
1回の充電で160キロ以上の距離の走行が可能で、ITを駆使し、カーナビゲーション画面に急速充電器の設置場所や、現在の残電量で走れるエリアを表示できるようにした。また、携帯端末で外から充電量の確認を行えるなどの最新機能も加えた。カルロス・ゴーン社長はリーフを運転して登場し、「排出ガスを全く出さないリーフは、新たな時代の第一歩を約束する」と決意を述べた。
「普及に向け、割高ではないEVを発売する。EVは決してニッチな車ではない」。ゴーン社長が強調するように、EVの早期低価格化に向けて、量産効果の発揮を目指す。10年後半に日本で約5万台、米国で15万台を生産。12年までに英国とポルトガルで各6万台分のEV用電池を生産し、時期は未定だが中国でもEVと電池の生産を検討している。補助金を適用した場合の価格は、電池価格を除き200万円前後となる見込みだ。
次世代エコカー“本命”の座をめぐっては、トヨタやホンダが投入したHVが先行するが、ゴーン社長は「HVのシェアは世界で2%に満たない」と一蹴(いっしゅう)、「20年には世界の自動車需要の1割に当たる550万~600万台がEVで占められるだろう」と、EVを中心に経営資源を投入する姿勢を明確にする。石油価格の高騰、環境規制のさらなる強化が追い風をもたらすとの見方で、低利融資などの優遇施策があれば、低コストで販売できるとした。
EVは国内外の自動車メーカーが参入を検討しており、激しい市場争いも予想される。トヨタはEVを12年に日米欧に投入、米GM(ゼネラル・モーターズ)やフォード・モーターなども早期投入を目指している。「究極のエコカー」と呼ばれたEVがクルマの新時代を切り開くことができるのか、成否は日産が握っているとも言えそうだ。