車にも「エコ」の波が押し寄せている。トヨタのハイブリッドカー・プリウスは新車販売台数でも絶好調。電気自動車(EV)も三菱自動車「i-MiEV(アイミーヴ)」を始め、各社の開発が進められている。そんな中、2輪車でも「電動スクーター」が普及のきざしを見せ始めている。来2010年には中小企業が販売攻勢に意欲をみせ、大手企業も参入する計画を明らかにしている。
電動スクーターは、電気自動車の2輪車版だ。動力源に充電式電池を用い、モーターで動く。通常の2輪車と違い、エンジンを搭載せず、ガソリンも不要なため、オイルやフィルターの交換などの手間もかからない。ほとんどが原付免許または普通運転免許で運転できる。
ペダルのついたモデルも
現在電動スクーターを積極的に販売しているのは中小企業だ。イーモービルは07年頃から新型の電動スクーター「カルマート」を販売している。最高時速が約50kmで、1充電での走行距離(航続距離)は最大で60kmと、ガソリンのスクーターとも遜色のないパワーと性能を備えている。
「来年は大々的に展開するつもりです。販売店・代理店などのチャネルを全国に増やしていきます」
と担当者は話す。整備が簡単なため、車の専門店でなくとも扱える。具体的には明かさなかったが、来年は家電製品を扱っているような「2輪車を売るのが意外と思えるような店」でも販売を始めるという。現在約18万円の価格も、学生など「エコ」に関心ある若い世代に興味を持ってもらえるよう「思い切った価格」に下げ、値ごろ感とともに攻勢をかける構えだ。
家庭用電源で充電できるスクーター「EV-R55」を09年3月から販売しているプロスタッフは、10年春から新しい電動スクーター「ミレット」を売り出す。ユニークなのは自転車のような「ペダル」がついているところ。
「万一バッテリーが切れたり、急勾配の坂道を登ったりする時のため、ペダルを付けました。足りないところを人が補おう、という発想です」(担当者)。
価格も13万円と手ごろで、しかも約59kgと軽量だ。
電池の値段が課題
そんな中、「東京モーターショー09」には、大手企業からも電動スクーターが出展された。ヤマハは「EC-03」「EC-f」「EC-fs」の3つのモデルを披露。そのうち「EC-03」は10年夏の発売が決まっている。
「通常、2輪車の展示にはコアなファンが多いのですが、今回のショーでは女性など新しい層にも興味を持ってもらうことができました」
と担当者は手ごたえをつかんでいる。また、ホンダからもコンセプトモデル「EVE-neo」が出展された。発売は決まっていないが、「一般向けの市販化を目的に開発を進めています」と担当者は語る。
次世代自動車振興センターの担当者は、普及への課題についてこう話す。
「充電池として使用されるリチウムイオン電池はまだまだ高価。これが量産されることで価格が下がり、かつ航続距離などの性能が上がれば、本当に手軽で便利な乗り物になると思います」
同センターの電気自動車等統計によると、電動スクーターの保有台数(推定値)は08年で6604台。10年に一気の普及となるか、注目だ。